マイワールド
ガラ――。
金山先生と、黒い猫を抱えたおじいさんが入ってきた。
「こちらに載せてください。」
金山先生は相変わらずの笑顔だ。
診察台に猫を載せたおじいさんは、私に気が付いた。
「ゆりか、あの子、誰?」
『ゆりか』――。
名前で呼び捨て――。
どういう関係だろうか。
「職業体験でいらっしゃってる、中学生さん。」
金山先生は笑顔のまま答えた。
「そうか。
懐かしいな。
おまえも中学生の頃、ここで体験したよな。」
おじいさんは優しく言った。
「ごめん、おじいちゃん。
仕事中。」
金山先生はウインクをした。
「おぉ、悪い悪い。」
私は首を傾げた。
『おじいちゃん』――。
血の繋がった『おじいちゃん』だろうか。
金山先生がタメ語を使っているのも気になる。
「ノミはいないけど……薬してあげてないでしょ?」
「なくなっちゃって。」
「定期的に来てって言ったじゃない。」
「ごめん、ゆりか。」
金山先生は私を見た。
「相川さん、フロントライン取って。」
「はい。」
『フロントライン』とは、ノミを防ぐ薬。
猫の首の辺りに数滴垂らしてあげるものだ。
クリもよくやっている。
「ごめんなさい。
どこですか?」
私はひかえめに聞いた。
「透明なケースの一番上。」
「はい。」
私はそれを金山先生に渡した。
これが今日初めての仕事だった。
「はい、じゃぁ受け付けでちゃんと買って帰ってね。」
金山先生はそう言い、おじいさんと診察室を出た。
そして、私はまた一人になった。
金山先生と、黒い猫を抱えたおじいさんが入ってきた。
「こちらに載せてください。」
金山先生は相変わらずの笑顔だ。
診察台に猫を載せたおじいさんは、私に気が付いた。
「ゆりか、あの子、誰?」
『ゆりか』――。
名前で呼び捨て――。
どういう関係だろうか。
「職業体験でいらっしゃってる、中学生さん。」
金山先生は笑顔のまま答えた。
「そうか。
懐かしいな。
おまえも中学生の頃、ここで体験したよな。」
おじいさんは優しく言った。
「ごめん、おじいちゃん。
仕事中。」
金山先生はウインクをした。
「おぉ、悪い悪い。」
私は首を傾げた。
『おじいちゃん』――。
血の繋がった『おじいちゃん』だろうか。
金山先生がタメ語を使っているのも気になる。
「ノミはいないけど……薬してあげてないでしょ?」
「なくなっちゃって。」
「定期的に来てって言ったじゃない。」
「ごめん、ゆりか。」
金山先生は私を見た。
「相川さん、フロントライン取って。」
「はい。」
『フロントライン』とは、ノミを防ぐ薬。
猫の首の辺りに数滴垂らしてあげるものだ。
クリもよくやっている。
「ごめんなさい。
どこですか?」
私はひかえめに聞いた。
「透明なケースの一番上。」
「はい。」
私はそれを金山先生に渡した。
これが今日初めての仕事だった。
「はい、じゃぁ受け付けでちゃんと買って帰ってね。」
金山先生はそう言い、おじいさんと診察室を出た。
そして、私はまた一人になった。