マイワールド


午後一時半。

それは突然のことだった。


この部屋では金山先生の診察が終わったときだ。

院内が急に騒がしくなった。

「ちょっと待ってて。」

金山先生は私にそう言い、走っていった。

真剣な顔になった彼女は、とてもかっこよかった。


私は気になって、診察室のドアを少し開け、
そこから首を出した。

「あ……。」

実も同じことをしていて、目が合った。

「どうしたんだろ……?」

「さぁ……?」

しばらくしても、
私達には何があったのかはわからなかった。

「職業体験の中学生さん、こっちに来てくれる?」

若い女性の先生に呼ばれ、
私達は入院室に向かった。


彼女の名札には、
『角川(かどかわ)』と書いてあった。


角川先生はドアを閉めた。

「どうしたんですか?」

実が静かに聞いた。

「ゴールデンレトリバーのワンちゃんが、
交通事故に遭って……。

ごめんなさい。

あなた達には、手伝わせられないの。

だから、昨日と同じようにケージ掃除をしてもらうね。

私と一緒に。」

角川先生は申し訳なさそうに言った。

「大丈夫です……。

はい……。」

私は必死に笑顔を作った。


ショックだが、仕方のないことだと思う。

中学生に命を預けようとは、
飼い主も犬も思わないだろう。

というより、私が無理だ。
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