マイワールド
とその時、
ドアと柱の隙間から、赤く染まった布が見えた。
犬用のストレッチャーに乗っていた。
犬だとはわかりにくかったが、確実に生き物だった。
「うっ……。」
急にクラッとして、
吐き出しそうになった。
「大丈夫?」
角川先生が私の背中を支えた。
「……はい……。」
私は苦笑いをした。
今、私は少しだけうれしい。
この慌ただしさは、普通の病院と変わらなかった。
一刻を争い、命と向き合うこの仕事に、今憧れた。
金山先生の意見文にあった、
『人間以外の動物が、身分証明書を持てなくても、病院と同じように動物病院で治療を受けることはできる。』というのは、
確実に彼女の言葉だと思う。
「相川?
大丈夫か……?」
実が私の顔を覗き込んだ。
「うん。」
私ははっきりと答え、
「角川先生……。
助かりますよね?」
と、視線の先を角川先生に移した。
「大丈夫。
ワンちゃんも、治療してる先生達も、とっても強いから。」
角川先生は、小さい子に話しているようだった。
でも、その簡潔で、純粋で、飾り気のない言葉に、
私は感動した。
「さぁ、ケージ掃除をしてもらうよ。」
「はい。」
「はい。」
だが、全く集中できなかった。
あの赤く染まった布と、
金山先生の真剣な顔が頭から離れない。
「二人とも!
手ぇ抜かないの!
きちんとやって!
これも仕事なの!」
とてもきつく言われた。
でも、そのとおりだと思う。
まともに祈ることもできない私が、
ただ心配をしているだけでは、時間の無駄だ。
あの犬の運命と私は無関係だ――。
わけのわからない気持ちと戦いながらケージ掃除をする時間は
とても長かった。
ドアと柱の隙間から、赤く染まった布が見えた。
犬用のストレッチャーに乗っていた。
犬だとはわかりにくかったが、確実に生き物だった。
「うっ……。」
急にクラッとして、
吐き出しそうになった。
「大丈夫?」
角川先生が私の背中を支えた。
「……はい……。」
私は苦笑いをした。
今、私は少しだけうれしい。
この慌ただしさは、普通の病院と変わらなかった。
一刻を争い、命と向き合うこの仕事に、今憧れた。
金山先生の意見文にあった、
『人間以外の動物が、身分証明書を持てなくても、病院と同じように動物病院で治療を受けることはできる。』というのは、
確実に彼女の言葉だと思う。
「相川?
大丈夫か……?」
実が私の顔を覗き込んだ。
「うん。」
私ははっきりと答え、
「角川先生……。
助かりますよね?」
と、視線の先を角川先生に移した。
「大丈夫。
ワンちゃんも、治療してる先生達も、とっても強いから。」
角川先生は、小さい子に話しているようだった。
でも、その簡潔で、純粋で、飾り気のない言葉に、
私は感動した。
「さぁ、ケージ掃除をしてもらうよ。」
「はい。」
「はい。」
だが、全く集中できなかった。
あの赤く染まった布と、
金山先生の真剣な顔が頭から離れない。
「二人とも!
手ぇ抜かないの!
きちんとやって!
これも仕事なの!」
とてもきつく言われた。
でも、そのとおりだと思う。
まともに祈ることもできない私が、
ただ心配をしているだけでは、時間の無駄だ。
あの犬の運命と私は無関係だ――。
わけのわからない気持ちと戦いながらケージ掃除をする時間は
とても長かった。