マイワールド
「そういえばさ、今日の体験で、
私も獣医になりたいって思ったんだよね。」

もちろん、これは本当のことだ。

「マジ?

え、じゃぁさ、大人になったら、
二人で開業しないか?

動物病院!」

「えっ?」

「おまえ成績どのくらい?」

「四十。」

「うっそ?

俺も!

高校一緒に行けんじゃん!

なぁ! 大学入ってさ、一緒に勉強してさ……」

「ちょっと声でかい。」

「ごめん。だからさ……」

「いいよ!

やろうよ!

動物病院。」

これはからかいではない。


実の目が輝いた。

「……いいのかよ?」

「もちろん!」

「じゃぁさ、金山先生と同じ高校いかないか?

『第一高校。』

あそこは偏差値五十九。

俺らがもう少し頑張れば届くよ!」

「そだね。」

やっと将来の目標が持てたような気がして、嬉しかった。

今まで悩んでいたのはこれかもしれない。

目標もないのに必死で何かを探していた――。

今、心が清潔になった気がする。

「でさ……聞きたいんだけど……。」

実が深刻な顔をして私を見た。

「何?」

「それって……俺と一緒に住んでもいいってこと……?」

「は?

別に。

てか、仕事と家庭は別だし。

そんな話まで今からする必要ないし。」

「だよな……。

やっぱおまえはただの男好きかぁ……。」

「何それ? ぶっ飛ばされたいの?」

「冗談だよ。」

「……。」

まとまりのない会話をしているうちに、学校に着いた。
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