マイワールド
『続いてのニュースです。
近日、
民家に出没する熊が増えています。
一般住民はどのような被害に遭っているのでしょうか。
その真相を追いました。』
流れるように言うアナウンサー。
私はテレビにくぎづけになった。
『こちらは、笹沼(ささぬま)さん宅が営む果樹園です。』
若い女性のニュースキャスターが、マイクを持って現れた。
『あ、ご覧ください。
歯型のついた桃が落ちています。』
キャスターはそれを手で拾い、
カメラに向けた。
『このことについて、笹沼さんはどう感じているのでしょうか。』
果樹園の前で、笹沼さんは語りだした。
『やっぱり悔しいですよ。
気持ちを込めて育てた果物を熊に取られてしまった……
非常に残念です。
本当に。』
私は唖然とする他なかった。
誰もが笹沼さんの味方をするだろうが、
私は納得がいかない。
熊が住む場所を減らしていったのは人間ではないか。
果物は人間のためだけにあるのか?
私は、怒りを覚えた。
これだ、この気持ちだ!
この怒りを作文にすれば!
すぐにペンを持ったが、
紙にインクが付く直前に手が止まった。
不安になったのだ。
私には、気持ちを込めて果物を作った経験がない。
それを荒らされてしまう気持ちはわからない。
本当に熊だけの味方をしていいのだろうか。
また、何もできなかった。
近日、
民家に出没する熊が増えています。
一般住民はどのような被害に遭っているのでしょうか。
その真相を追いました。』
流れるように言うアナウンサー。
私はテレビにくぎづけになった。
『こちらは、笹沼(ささぬま)さん宅が営む果樹園です。』
若い女性のニュースキャスターが、マイクを持って現れた。
『あ、ご覧ください。
歯型のついた桃が落ちています。』
キャスターはそれを手で拾い、
カメラに向けた。
『このことについて、笹沼さんはどう感じているのでしょうか。』
果樹園の前で、笹沼さんは語りだした。
『やっぱり悔しいですよ。
気持ちを込めて育てた果物を熊に取られてしまった……
非常に残念です。
本当に。』
私は唖然とする他なかった。
誰もが笹沼さんの味方をするだろうが、
私は納得がいかない。
熊が住む場所を減らしていったのは人間ではないか。
果物は人間のためだけにあるのか?
私は、怒りを覚えた。
これだ、この気持ちだ!
この怒りを作文にすれば!
すぐにペンを持ったが、
紙にインクが付く直前に手が止まった。
不安になったのだ。
私には、気持ちを込めて果物を作った経験がない。
それを荒らされてしまう気持ちはわからない。
本当に熊だけの味方をしていいのだろうか。
また、何もできなかった。