マイワールド
「ウチさ……『去年犬が死んだ』って言ったじゃん?」

「うん。」

「そん時、ショックなことがあって……。

……ネーヤア、
『動物と人間が平等な世界』とか考えてるんでしょ?」

「え……まぁ、うん。」

このことは、少しだけ話してある。

ウーパーの映画のことはまだ言っていないが。

「それ、無理だよ。」

「……?」

「実はウチもさ、
その頃ぐらいまではネーヤアと同じこと考えてたんだよ。

まぁ、ネーヤアほど本気で悩んだわけじゃないけど。

でも、犬……コロっていうんだけど……コロが死んだ時、
思い知らされた……っていうか。」

「どうゆうこと?」

「コロが死んでウチが落ち込んでたのは大体一週間。

私のおばあちゃんが亡くなって落ち込んでたのは大体一ヶ月。」

「……。」

「受け入れたくないけど、
実際に犬と人間でこんなに差ができちゃうんだよ……。

多分、ネーヤアだって同じだと思う。

いくら意識したって、本当の自分には勝てないよ。

こんなこと言いたくないけど、本当のことだと思う……。」

「……。」

カナッペの言葉は教室の壁に吸収されていった。

「現実的なこと言えばかっこつくと思わないで……。」

私はつぶやくように言った。

「は……?」

カナッペは空気が抜けたような声を出しながら私を見た。

「……。

ごめん。

私もよくわかんない。」

私は訂正するように言った。

「……。

ウチも、よくわかんない……。」

しばらく沈黙が続く。
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