マイワールド


「おい、相川!

なんかすげぇやつが来てるぞ!」

そんなある日の放課後、
明がそう言いながら私の教室まで走ってきた。

「何、誰?」

「桜日野兎(さくらにちのうさぎ)だよ!

とにかく行けよ!

『相川彩音さんはいますか?』だってよ!」

「『桜日野兎』?

なんで私?

てか……えぇ……、マジ?」

「マジだよ!

『なんで』とか聞かれてもわかんねぇよ!

いいから、とにかく正門までダッシュ!」

「はい!」

私は全速力で走った。


久しぶりの事件だ。

たくさん休憩はとったのだから、
これくらいのことが起きなくてはつまらない。


『桜日野兎』――。

春の『桜』、夏の『日差し』、秋の『野原(秋じゃなくても野原はあると思うが。)』、冬の『白い兎』で『桜日野兎』。

子役、女優として有名な中学生だ。


でも一体なぜ私に――。

「はぁ……はぁ……。」

息を切らしながら前に目をやると、
本物の桜日野兎がいた。


私は呼吸を整えて、彼女の前に立った。
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