マイワールド
私は小さくため息をついてから、
今までのことを話した。

話終えたときは、もう六時半になっていた。

約三十分間、なるべく伝わるように話した。

「中栄未来監督がそんな映画?

意外だな。

で、おまえはビッグチャンスを自分から手放したってわけか。」

裕也は、表情をオーバーに変えながら言った。

「これからどうしたらいいかな?」

私は心の底から聞いた。

「俺は、おまえの人生っていうか、まぁそれっぽいものに大きくは関わる勇気はまだないんだけどさ、
諦めるのはもったいないと思う。」

裕也は照れ臭そうに言った。


『まだ』――。

その二文字は、
私の心に刻み込まれたような気がした。

「だよね……。

でもさ、将来、こんなの職業になんかならないじゃん?

だから……もっと将来に役立つこと考えた方がいいのかなって思ってて。」

その後の一分ほどは、お互いに何もしゃべらなかった。

「そんなことはないって。」

裕也が口を開いた。

「動物のためにできる職業なんていくらでもあるじゃんか。」

「どうしたのよ、急に。

例えば?」

「獣医さんとか。

直接動物を助けなくたって、小説とか漫画で呼び掛けていったっていいし。

職業じゃなくたっていいじゃんかよ!

普通に仕事しながら、今みたいにネットで活動とか。

国にある動物保護団体とかも!

ボランティアだって!

ほら、いっぱいあるだろ?」

あまりにノーストップで話す裕也を見て、
私は唖然としてしまった。

一分間、必死に考えてくれたのだろう。

私には思い付きもしない答えだった。

「裕也って天才?

それとも、私が何にも考えてなかっただけ?」

私は恥ずかしくなった。

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