マイワールド
「なんか、わりぃな。

こんなことに時間使わしちゃって。

わざわざあげてもらったのにこれだけだよ。

じゃ、帰るわ。」

明は松葉杖を取って立ち上がろうとした。

「あ、待って。

歩きでしょ?」

私が引き止めると、明の動きが止まった。

「あぁ。」

「私のお母さんに送ってもらいな。

その足で家まで帰るのキツイでしょ?」

「え? いいって。

俺が勝手に来たんだから。」

「ダメ!

九時まで待ってて。

今メールするから。」

「後三十分もあるじゃんかよ。

いいって。」

「ダメっつってんでしょ!」

私は自分でも驚くほどキツく言った。

「……はい。」

明は目を丸くしていた。

『明が家に来てます!

暗いから、帰って来たら送ってあげて。』

送信。

「じゃぁ、九時まで暇潰さなきゃね。

あ、ちょっと待ってて。

お菓子持ってくるから。」

「あ……ありがとう。」

一人でリビングに向かう途中、
カナッペとの喧嘩が頭に浮かんできた。


『明だっていい』――。


私は頭を振った。


そんなわけない。
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