マイワールド
「ただいまぁ。」

母が帰ってきた。


私は誰にもわからないようなため息を吐いた。

「あ、帰ってきたんじゃねぇか?」

明が松葉杖を持ってゆっくりと立ち上がった。

「うん。

じゃぁ……」

私は玄関まで明を送った。

「あら! どうしたの? その足は。」

母は目を丸くした。

「いやぁ。

俺、バカだったんですよ。

今日の試合終了後にコケて……。

大丈夫です。」

明は小さくピースした。

「ホントにぃ。

お大事にしてね。」

「はい。」


私は作り笑いをしてみた。

「じゃぁ、お母さん。

明送ってあげて。」

「彩音は乗っていかないの?」

「うん。」

これ以上、悩みの原因は作りたくなかった。

「了解。じゃぁ、行ってくるね。」

「行ってらっしゃい。」

二人は出て行った。


家で一人になった私は、
しばらく壁に寄り掛かっていた。
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