マイワールド
「あんなことってあるんだねぇ。

でももう見られないかな?」

カナッペが悲しそうに言った。

「見たいの?」

「そうじゃなくて。」

「……?」

「もう少ししたら、
みんな受験のことしか頭になくなっちゃうでしょ?

そしたら、友人関係がどうとか言ってられないんじゃないかな。

だから……、トラブルとかなくなるよ。

いいことなんだろうけど、何か寂しくない?

それで、合格発表の時にさ、
また友達が大事だとか思うんだよね。」

「……。」

カナッペの人間観察力はすごい。


確かにそのとおりだと思う。

三年になってから、
どこのクラスもあまり喧嘩をしていない(私とカナッペはしたけれど。)。

喧嘩がいいことというわけではないけれど、
勉強のための毎日だった気もする。

だけど――。

「そうかな?」

私は空気を遮った。

「……?」

「恵子とレミならいつだってトラブル起こしてくれると思う。

ある意味羨ましいよ。

勉強に左右されないって。」

すると、カナッペがクスリと笑った。

「ネーヤアだってされてないよ。」

「そう?」

「うん。」

教室に入ると、
ほとんどの人がカリカリと勉強をしていた。

「ウチらもやろうか。

友情を大切にしながら。」

「カナッペ……ちょっと臭いよ、
それぇ。」

「うるさいっ!」

こうしている間も、
受験は近づいている――。
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