マイワールド
映画館の前で、
明達と待ち合わせをした。
「本当に田舎臭い映画館だねぇ。」
野兎がいつもの口調で言った。
「都会だけが全てじゃないの。
それくらい学んだ方がいいんじゃない?」
「……。
まいいや、今日は私のこと、
『桜日野兎』とも『金山沙織』とも呼ばないで。」
「じゃ、なんて呼べばいいの?
てかなんで?」
「『星井藍(ほしいあい)』ね。
桜日野兎のプライベートだよ?
誰にも気付かれないでいたいからに決まってるじゃん。
だからあえてサングラスもしてこなかったし、
少し派手なメイクしてきたの。」
「あぁそうですか。
それにしてもずいぶん可愛い名前だねぇ。」
「それが何か?」
また喧嘩が始まりそうになってきた。
「はいはい、シャラップ!
こんな大事な日に喧嘩しなくてもいいだろ?
仲良くやろ!
なっ?
ほら、チケット買いに行くぞ!」
明が、私と野兎の背中を叩いた。