マイワールド
「ただいま」
中栄は誰もいないアパートに帰った。
そして、無意識にテレビをつけた。
『こんばんは。
今を生きる若い男性のための番組、“オンザナイト”、
今日も始まります。
今日の議題は、ストレス解消方法。
上司に怒られてストレスが……なんて方に必見です!
では……』
見慣れないアナウンサーが元気よくしゃべっている。
中栄はあまりテレビには興味を示さずに、
独りで缶ビールを飲んだ。
「はぁ……。」
一息吐いて、背もたれに寄り掛かった。
「『ネイル』……。
サバンナに帰してやりたいね。
猛獣を見せ物にしていいのかよ?」
目の前の缶に話し掛ける。
――俺は昔からおかしいほど動物好きだった。
小学生の頃から、
捨てイヌを拾ってきたり、動物に関する番組を毎日見ていたり……。
だから同級生からは『人間もどき』なんてあだ名で呼ばれていた。
動物園の飼育員を志望したのも、
全てこの『過度な動物好き』からだった。
でも、動物園はそんな夢のような場所ではなかった。
いや、本当に『夢のような動物園』は存在しているだろう。
けれど、俺の働いている場所は違う。
まだ力のある動物を、檻という囲いに閉じ込めているだけだ。
それを人に見せる……。
なんて恐ろしいんだ、
人間は。
昔の映像が中栄の頭をぐるぐる駆け巡る。
そして現実に引き戻されると、
フッという笑いが込み上げてきた。