マイワールド
『悩みを言葉にするのですか?』

テレビのアナウンサーが言った。


中栄は無意識に振り返った。

『はい。

“悩み”というのは、
言葉にしてしまえば半分以上は解決できるものなのです。』

専門家らしき人が偉そうに答えた。

『なるほど。

では、具体的にどのような方法があるのですか?』

『心理カウンセラーに全てを打ち明けるのが一番です。

しかし、なかなか時間が取れない方もいらっしゃいますよね?

そういう場合は、日記をおすすめいたします。』

『“日記”ですか?』

『はい。

日記帳を自分の居場所にし、
そこに何も隠さずに悩みを書き込んで行くのです。』

『なるほど。』


中栄は衝動に駆られた。

すぐにテレビを消し、
物置から、学生の頃使っていたノートを持ってきた。

「やるじゃんか、この番組。

つまんねぇと思ってたけど、時には役に立つんだな。」

今度はノートに向かって話し掛けた。


――今日、ライオンの担当になった。……


思う存分書きなぐった後、彼は眠りについた。
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