マイワールド
――バカ……。

落ち着けよ。

チャンスは後一回。

俺らは本番に強いんだよ。

見せ付けてやれ!


中栄は『ライオンの爪』を頭の中で再生した。


観客の優菜も同じことをした。


――ラン、ネイルになれ!

「ワン!」

ランは吠えた。

「勝つぞ!」

「ワン!」

中栄は汚れたフリスビーを投げた。


五メートル、十メートル、十五メートル、二十メートル、二十五メートル――。

三十メートル!


フリスビーは吸い込まれるようにランの口に入った。


中栄はしばらく何が起きたのかわからなかった。

「三十一メートル!

現在トップになりました!」

司会者が高らかに言った。

「『トップ』……?

『トップ』……『トップ』……。

……トップだってよ!」

中栄は、フリスビーをくわえたランのところまで走っていった。


ランも、尻尾をちぎれるほど振って、走ってきた。


抱き合った――。


――ありがとう……。


中栄は涙した。
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