マイワールド
「いや、タイミング悪いことはわかってんだよ。

たださ、夏休み中に言っておきたいなぁなんて思ってたら、
今になっちゃって。

明日試合だし、あさってから旅行だし。」

初めてだった。

こんな気持ちになったのは。

私が人気者だった頃、
レミに言われた言葉を思い出した。

『みんなかっこつけて付き合ってるんだよ。

本当の両思いなんて、奇跡みたいなもんなんだし。

顔がかっこいいとかかわいいとか、そんなの、好きなんじゃないよ。

タイプなだけ。

あたしにはまだ、奇跡は起きてないな。

恋なんてしたことないし。

ただ、裕也といると、あたしはかっこよく見えるんだよね。

あ!

誰にも言わないでね。

ネーヤアだけだからね。』

『ネーヤア』は私のニックネームだった。


私には、奇跡が起こったのだろうか。

そう考えると、自然と笑みがあふれ、心臓の激しい動きは落ち着いた。

「恋愛経験無しで、嫌われもので、変わり者で、頼りにならない私でいいの?」

どこかの映画で聞いた事のあるセリフを言ってみた。

「俺も初恋だから大丈夫だよ。」

そう言われて、思わず下を向いてしまった。


裕也はかまわず続けた。

「付き合うって、別れたら嫌いになるのかなって何度も思ったんだ……。

大体、まだ中学生だし。

おまえが言ってたとおり、中学生で付き合っていた人と結婚なんてできない……かもしれない。

けどさ、いつどうなるとか気にしないで『今を!』みたいな、だめかな?

……あ、俺わけわかんないこと言ってるね。

あの、今の、かっこつけてるとかそういうんじゃないからね。」

目は合わなかった。

「よくわかんないよ。

そこは。

ハッキリいって、どうだっていい。

でもね、何にも考えないで一緒にいれたらいいよね。

こちらこそ、つきあってください!

かっこつけないで、周りの目気にしないで。

今ね、中栄監督の映画一緒に見に行きたいなって思ってみた。

私、裕也との初デートをそれにしたい!

だから、諦められないよね?」

今、目が合った。

「そだね。」

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