マイワールド
「おぉい!
ここで昼食べない?」
綺麗な川の前で、
裕也が大きく私達に手を振った。
私と星川さんは走って裕也のところまで行き、
意味のないアイコンタクトを取った。
「川で何食べるんですか?」
「ここには僕の知り合いが住んでるんだ。
釣りが趣味だから、
魚、頼んでみよう。」
星川さんは裕也と、
すぐ隣の小さな小屋に入っていった。
私も慌ててついていった。
『釣り』――。
それも、命と向き合うべきものなのだろうか。
「お!
健じゃんか。
裕也くんも!
隣は……。」
「彩音ちゃんです。
ユウくんの彼女。」
「裕也くん、
彼女できたの?
ま、座れよ。」
威勢のいい、三十台後半ぐらいの男性は、
私達を古びた木のカウンターに座らせた。
「彩音ちゃん、
この人、さっき言った、釣りが趣味の人、池内(いけうち)さん。」
星川さんに紹介された。
「よろしくお願いします。
相川彩音です。」
私はペコリと頭を下げた。
「よろしくな。
彩音ちゃん。」
池内さんは私達三人それぞれに水を出した。
「昼飯だろ?
ちょっと待ってろ!
さっきうまいのが取れたんだよ。」
池内さんはそう言って、表へ出た。
「ここの魚、最高なんだよ。」
裕也は私の顔をまじまじと見ながら言った。
「楽しみ。」
うきうきしてきた。
しばらくすると、池内さんは戻ってきた。
「おまたせぇ!
はい、召し上がれ。
鮎の塩焼きです。」
ホクホクと湯気のたった魚が三匹、
カウンターに置かれた。
「いただきます。」
私達は鮎に噛り付いた。
「うまっ」
「おいしっ」
「さすがっ」
目の前のものは、
それ以外の言葉では表せないほどの味だった。
だが私は、食べている途中で気がついた。
この鮎達は、ついさっきまで生きていた――。