マイワールド


終業式。

校長の話がやけに長い。

怪我をしないようにだとか、勉強を頑張れだとか、部活に励めだとか。

最近思う。

こんなことがわからない人はいるわけがないって。

怪我したい人も、勉強は怠けるものだと思っている人も、好きな部活サボる人もほとんどいないだろう。

「まぁどうでもいいけど。」

また小声で言った。

最近口癖になってきているかもしれない。


校歌を歌い終わると、体育館がざわめきだした。

まるでアイドルでも来るかのようだ。

私は知らないが、中栄未来は相当おもしろい映画を作る人らしい。

映画を見に行く友達がいないというのは、やはり寂しいことなのかもしれない。


しばらくして、有名人がステージに現れた。

「おぉ」

私は思わず声を出した。

周りの人がどんなリアクションだったかはわからない。

ただ、私はステージに立つ一人に感動した。

なぜか、中栄未来はだらしが無い女性というイメージがあった。

だが正反対だ。

男性で、かっこいいわけではないが、何かすばらしいオーラが出ている。


私は、自分の目が見開くのを感じた。

彼は何かを話しているが、何も聞こえない。

もしかしたら、人間に感動したのはこの時が初めてかもしれない。


私は必死に、その感動を表に出さないようにと自分に言い聞かせた。



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