ショートショートの林
「世界一決定戦」
「赤ァコーナァー!163センチ62キロ!山田ァァァァ!太郎ォォォ!」

割れんばかりの歓声の中、叫ばれたのは僕の名前。

紛れもなく、日本有数のこのドーム会場真ん中の特設リングでロープにもたれかかる

今にも泣きそうな僕の名前だ。

「青ォコーナァー!166センチ58キロォ!鈴ゥゥゥ木ィィ一郎ォォ!!」

対角線上には同じように泣きそうな顔をした一人の男。

トランクスにボクシングのグローブ、ヘッドギアに至るまで青で統一されたその人は

ひいき目に見てもヒョロヒョロで、とても格闘技をやるようにはみえなかった。

とはいえ、色こそ赤いものの同じ装備をした僕だって、さっきのアナウンスどおりの体型だ。

いったい、こんなところで何をさせようって言うのか。

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