ショートショートの林
「それでは、ファイト!」
ゴングが鳴り響き、僕は結局なにも分からないままコーナーから旅立つ。
「左手を出していけ!」
姉の声が会場に反響する。
なぜか、セコンドであるうちの姉はマイク越しに会場中に響く声で僕に指示を出していた。
「一郎、ガードだ!素人のパンチなんて痛くない!」
そして、これまたなぜか、相手のセコンドである鈴木さんの父親の声も、会場中に、もちろん僕にも届いていた。
「右に回って!」
姉の声に僕が右に回る。
「下がれ!」「パンチ!」
鈴木さんのお父さんの声にかぶるように聞こえる姉の声。
鈴木さんが一歩あとずさって、僕のパンチが空を切る。
「しゃがんで!」「今だ一郎!ストレート!」
今度は姉の声に鈴木さんのお父さんの声がかぶる。
僕は咄嗟にかがんで、鈴木さんのパンチが頭上をかすめる。
鈴木さんはそのままバランスを崩してよろける。
しかし、姉はそのチャンスに反応できず、僕はそれを呆然と眺めた。
ゴングが鳴り響き、僕は結局なにも分からないままコーナーから旅立つ。
「左手を出していけ!」
姉の声が会場に反響する。
なぜか、セコンドであるうちの姉はマイク越しに会場中に響く声で僕に指示を出していた。
「一郎、ガードだ!素人のパンチなんて痛くない!」
そして、これまたなぜか、相手のセコンドである鈴木さんの父親の声も、会場中に、もちろん僕にも届いていた。
「右に回って!」
姉の声に僕が右に回る。
「下がれ!」「パンチ!」
鈴木さんのお父さんの声にかぶるように聞こえる姉の声。
鈴木さんが一歩あとずさって、僕のパンチが空を切る。
「しゃがんで!」「今だ一郎!ストレート!」
今度は姉の声に鈴木さんのお父さんの声がかぶる。
僕は咄嗟にかがんで、鈴木さんのパンチが頭上をかすめる。
鈴木さんはそのままバランスを崩してよろける。
しかし、姉はそのチャンスに反応できず、僕はそれを呆然と眺めた。