ショートショートの林
「一歩下がって避ける!そのまま右ストレート!」
姉の指示に従って後ずさり、右の拳を構える僕に、鈴木さんはつっこんできた。
直前の相手側の指示は「右フックで様子を見ろ」だったはず。
避けた僕を追うなんてことは、完全にポイントを失う行為だ。
「よ、よけ、いや、ガード!?ちょ…」
姉の混乱した声が耳に届いたときには、僕の頬はすでに2度のパンチを受けていた。
そして突き刺さるいい感じのアッパー。
決して強いパンチではないと思うが、ガードも出来ずにいたアゴにクリーンヒットしたそれは
見事に僕の脳を揺らし、僕は大の字で後ろに倒れこんだ。