ショートショートの林
「あ!気がつきました!皆さん!山田さんが、チャンピオンが目を覚ましました!」

くらくらする頭をゆっくり起こすと、僕は上半身を姉に抱きかかえられていた。

「やった!やったよ太郎!5億円だよ!!」

ごおく?半狂乱で叫ぶ姉の言葉をどう理解していいのかわからずに、天井から当たるライトに目を細める。

「チャンピオン、見事でした!」

マイクを持ったアナウンサーがまだ体も起こしきってない僕に迫る。

「え、っと、あの…僕、勝ったんですか?」

「はい!見事でした!」

「でも、KOされて…あ、もしかして反則ですか、相手のポイントが」

「いいえ、相手の減点はダッシュとパンチ3発で4点。ルール内でのKO劇でした」

アナウンサーの説明が耳に入るが、僕には全く意味がわからない。

彼の言っていることをそのまま理解するなら、僕はKO負けしているはずだ。

しかし彼は僕をチャンピオンだと言う。

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