ショートショートの林
「今回、この面接で私にこうやって怒鳴られて『うるさいヤツがいた』と思うならそれも勝手だろう!だがね!この後そう思ったまま、もし何かの間違いで君が就職したらもっと手痛い仕打ちを受けることになるんだ!わかったかね!」

「えと…あの…」

「なんだね!この上でまだ何かいいたいことがあるのかね!言うなら言うではっきりしたまえ!なんなんだね!」

山田は一息でそれだけ言うと、はぁはぁと荒い息で若者を睨み殺すかのように見た。








「あのですね、自分、駅前の蕎麦屋のせがれなんすけどね、こちらの社長さんが大至急配達してくれっつーから前掛けもかけずにすっとんで来たんすけど、社長室どこですかね」

「……え?」








「確認もせずに怒鳴りつけて営業時間外にやっと届けてもらった蕎麦を伸びさせるとはどういうことかね山田君。昔から思っていたが君はいまいちそそっかしいところが…」

山田は面接室の外で伸びに伸びていた蕎麦よりもずっと長い社長の説教を聞きながら、大きく溜息をついた。

「なんだねその溜息は!君がしっかりしていれば私だって忙しい時間にこんな話を……」

視線を窓の外に落とすと、白く清潔な蕎麦屋の制服に身を包んだ若者が夕方の街を自転車で駆けぬけて行くのがみえた。

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