身代わり姫
「……はい、すみません。シエラ様」


レオノーラはうつむいて言い、シエラはその頭に追い討ちをかけるように厳しい声で言います。


「王女が召使いに様付けなどしてはならないと、いったでしょう?
ああ、私のグラディス王女がご無事であれば、このような茶番劇などしなくてすんだのに!」


瞳に涙が滲みましたが、レオノーラはこれ以上涙が零れないように、ぐっと我慢しました。

泣いてはダメ。
泣いてはダメよ。


グラディス王女の乳母だったというシエラは、紹介された瞬間から、レオノーラを憎しみ溢れる目で見ていました。

グラディス王女がそうであるように、彼女もまた、レオノーラのせいでグラディス王女が呪われたと思っているのです。

国王様は間違っている。
この娘はきっと悪魔の仲間で、美しいグラディス王女を妬んで呪いをかけさせたんだ。
この娘を殺してしまえば、グラディス王女はきっと元の通りのお姿になるはずなのに。

シエラは目の前の娘を見ながら、王宮の奥で泣き暮らしているだろう王女を思い出し、胸が苦しくなりました。



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