身代わり姫
グラディス王女は、召使いたちの案内で、王女用の離宮に一度落ち着くこととなりました。


失礼致します、と王女が立ち去った後には、かぐわしい甘い香りが残りました。


「なんと魅力的な姫なのだろう。あの瞳を見ていると、心まで吸い込まれそうな」


国王が言い、大臣たちが口々にグラディス王女を褒めました。


「マチホ国の宝石と呼ばれるのも納得ですなあ。いや、麗しい」


「あの香りはマチホ国の香水でしょうか？　なんともよい香りが」



少し興奮したような会話を遮るように、ナマタ王子が落ち着いた様子で言いました。


「夕刻頃、グラディス王女を誘って城の庭を散歩しましょう。それまではボクは部屋に戻っております。読みかけの書物がありますので」


「ふむ、そうか。
ナマタ、王女は色々不安であろうから、優しく接して差し上げるのだぞ」


国王の言葉に、ナマタ王子はにこっと笑って頷きました。


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