身代わり姫
睡蓮の花が浮かぶ池のそばに、離宮はありました。

その一室に落ち着いたレオノーラは、ほう、という溜め息と共に長椅子にへたり込みました。


ああ、まだ足ががくがくと震えているわ……。
胸もどきどきしすぎて、息苦しい。


レオノーラは、ついさっき挨拶をしたビーワ国の方々を思い出して身震いしました。

みんな私をじろじろと見ていたけれど、もしかして私がグラディス王女ではないことに気がついたのかしら?


ううん、大丈夫よね。でも、怖かったわ……。



それにしても、とレオノーラは、ついさっき話したナマタ王子を思い出しました。

ナマタ王子は、今年で17歳だと聞いていましたが、落ち着いた物腰のせいか、もう少し年上にも見えました。
栗色のさらさらとした髪に、理知的な輝きの、髪の色と同じ栗色の瞳。少し浅黒く、引き締まった肌は、武術をやっているせいでしょうか。

お伽話に出てくる王子さまって、きっとナマタ王子のようなんでしょうね、とレオノーラは溜め息をつきました。
とても賢そうで、優しそうで。
お会いするまでは、どんな方なのか不安だったけれど……。


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