身代わり姫
レオノーラが、ふうっと大きな溜め息をついた途端、ノックの音と共にシエラが入ってきました。
「グラディス王女、のんびりなさる暇があるのなら、本の一冊でも読んだら如何です? 先日、公爵夫人の言われた本を、ご存じなかったでしょう。知らないなんて、恥ずべきことですわ」
「あ、はい……。そうですね、そうします」
シエラはいつものしかめ面で、機械のように夕方からの予定を説明して(合間に小言を言うのを忘れませんでしたが)、
お時間になったらナマタ王子がお迎えに来られるので、と言って出ていきました。
「相変わらずイヤミなおばさんだなあ。レオノーラ、今は王女なんだからさ、ガツンと言ってやれよ!」
水晶から現れたリュイが、シエラの消えた扉に向かって舌を出しました。
「シエラはマチホ国のことを思って言ってるのよ。グラディス王女だったら私みたいにおろおろせずに、立派にお仕事をこなされたと思うの。だから、仕方ないわ」
レオノーラはテーブルの上に重ねられた本を一冊取って、開きました。
「レオノーラ……」
寂しそうなレオノーラの横顔を、リュイはなにも言えずに眺めました。
「グラディス王女、のんびりなさる暇があるのなら、本の一冊でも読んだら如何です? 先日、公爵夫人の言われた本を、ご存じなかったでしょう。知らないなんて、恥ずべきことですわ」
「あ、はい……。そうですね、そうします」
シエラはいつものしかめ面で、機械のように夕方からの予定を説明して(合間に小言を言うのを忘れませんでしたが)、
お時間になったらナマタ王子がお迎えに来られるので、と言って出ていきました。
「相変わらずイヤミなおばさんだなあ。レオノーラ、今は王女なんだからさ、ガツンと言ってやれよ!」
水晶から現れたリュイが、シエラの消えた扉に向かって舌を出しました。
「シエラはマチホ国のことを思って言ってるのよ。グラディス王女だったら私みたいにおろおろせずに、立派にお仕事をこなされたと思うの。だから、仕方ないわ」
レオノーラはテーブルの上に重ねられた本を一冊取って、開きました。
「レオノーラ……」
寂しそうなレオノーラの横顔を、リュイはなにも言えずに眺めました。