身代わり姫
グラディス王女の離宮から出てきたシエラは、がりがりと爪を噛みながら歩いていました。


ああ、なんで私があんな娘の世話をしなくてはいけないのかしら!
知恵も気品もない田舎娘を、王女として扱うなんて、もう辛抱できないわ。それに……


シエラはマチホ国から届いた手紙の内容を思い出しました。


シエラが大切に育てたグラディス王女が、ますます具合が悪くなったと書いてあったのです。
髪は抜け、肌は岩のように硬くなり、口からは喋る度に毒蛇や毒蜘蛛が溢れる、と。
グラディス王女を助ける手だては未だ見つからないのだ、と手紙をくれた仲間は最後に書いていました。


グラディス様……。
遠い場所にいる、今も泣いているであろう本当の王女の事を思うと、シエラの胸は張り裂けそうでした。

グラディス様をあんな目に合わせた娘の世話なんて、このまま出来るものか。このまま幸せになんかさせるものか。

……このままにさせておくものか。


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