身代わり姫
突如現れて大声を出したナマタ王子に、3人は驚いて、その動きをとめました。


「神聖なる王宮にて刃物を振り回すのは極刑だぞ。しかもシエラ、お前は主である王女に何をしておるのだ」


ナマタ王子は、がくがくと震えだした乳母の手からナイフをたたき落としました。


「そして、わが妻よ。あなたの名前はグラディスではないのかな?
先ほどはその魔物に別の名で呼ばれていたようだけれど?」


グラディス王女だった娘は、蒼白な顔をしてその場にへたり込みました。その前に、服を着たカエルが腕を組んで立ちふさがります。


「オレは魔物なんかじゃないぞ! 精霊だ!」


ナマタ王子はそのカエルを見て、愉快そうに笑みを浮かべました。


「すまないが、我が国では精霊なんてものは信じてはいなくてね。
得体のしれん生き物は全て魔物だよ。特に喋るカエルなんて、魔物以外の何者でもないな」


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