身代わり姫
「王子、お願い致します!
私の話を、お聞き下さいませ!
私はこの悪魔の娘を殺して、真実のグラディス王女をこちらに……」


「ビーワ国を騙し、そこいらの町娘を王女だのと言ったそなたも、同罪だ。
さあ、早く牢に連れて行け」


衛兵に捕まえられたシエラは必死に言い訳を叫んでいましたが、王子はそんなシエラを無視して、兵士に大人しく捕まっているグラディス王女に近づきました。


「ふん、悪魔ね……。この美貌も悪魔たる所以かい? こんな悪魔がいるなんて、知らなかったな。
まあ、そんな事は本当はどうでもいいんだ」


王子はレオノーラの美しい髪を一房掴んで、くっくっと笑いました。


「これを理由に、マチホ国に戦を仕掛けられる。
ボクはね、愚かな王女を妻に取って、マチホ国と友好を深めるよりも、戦を仕掛けて手に入れた方が早いと常々思っていたのさ」


王子は掴んだ一房をぐいっと引きました。


「いた……っ!」


「さすがの父王も、この戦をイヤとは言わないだろう。
形だけでも、こんな女と夫婦になった甲斐があるよ」


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