身代わり姫
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臭い水が溜まった汚い地下牢に、レオノーラは無造作に放り込まれました。

ばしゃんっと水たまりに倒れ込んだレオノーラに、衛兵が冷たい声で言いました。


「お前は恐ろしい女だな!
国中を騙すなんて! 国王様も酷くお怒りさ。近い内にはり付けになるだろうよ」


ガチャン! と激しく閉じられた鉄格子の中で、レオノーラはうずくまって泣きました。


ああ、いつかこんな日が来ると思っていたわ。人を騙して幸せになれる筈がないんですもの。
私はたくさんの人を騙してしまった。それは許される事ではないのよ。


「レオノーラ……」


リュイの小さな声がして、レオノーラはぱっと顔を上げました。


「ああ、リュイ。よかった、無事だったのね」


レオノーラの膝にちょこんと座ったリュイを、牢から立ち去る衛兵に見つからないように体で隠してから、声をを潜めて言いました。


「リュイ、すぐに逃げなさい。ここにいたら、あなたまで処刑されちゃう!」


「レオノーラはオレの主だぞ。置いて逃げたりするもんか。レオノーラ、オレがどうにかして逃がしてやるからな!」


「ああ、リュイ。そんなの無理だわ。ここにはいっぱい見張りもいるし、深い地下なのよ」
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