身代わり姫
目が覚めた時には水晶の中で、オレは記憶を失っていた。

覚えているのは自分の為の涙を浴びなくては、ここに閉じこめられたままだという事。


二人位、オレに気づく人間がいたかな。でもオレの為に泣いてはくれなかった。

だんだん息苦しくなってきて、力も尽きようとしていて、そんな時にレオノーラに助けられたんだ。
レオノーラのお陰さ。



リュアネスはふー、と大きな溜め息をついてレオノーラに微笑みかけました。
真剣な国王に向き直って続けます。


「それで、やっと水晶から出られたんだけど、姿がカエルだったんだ。魔力も多少あるし、パメラが精霊だって言うからそうなんだって思い込んでいたんだけど、悪魔は呪いを二重にかけてたんだ」

リュアネスはぶ厚いステーキ肉をぱくりと食べて言いました。


「王子にナイフで刺されて、レオノーラの涙を浴びるまで、自分がリュアネスだと忘れていたよ」


< 204 / 245 >

この作品をシェア

pagetop