身代わり姫
それから何回目かの息継ぎを、レオノーラがした時です。

横で、ざぶんという音がしました。


「え……? 王女様!?」


グラディス王女が、池に潜ったのです。
ぷくぷくと泡が出たかと思うと、王女は苦しそうに顔を上げて息継ぎをしました。


『こっちには、ないかも。向こうだわ、きっと』


「はいっ、あちらですね!」


レオノーラはにっこり笑って、グラディス王女の指差す方向に潜りました。グラディス王女も一緒に息継ぎをし、手を水底に這わせます。


二人がどれくらい潜った頃でしょうか。

長く浸かっていたせいで震えだしたグラディス王女の指先が、何かを掴みました。


『あ……。あった!』


グラディス王女が掲げた手の中には、キラキラと輝く妖精の涙のはめられた指輪が。


「やったあ! よかった!」


レオノーラがきゃあ! と喜びの悲鳴を上げて笑いました。


『あった! あったわ! ちゃんと、私が見つけたのよ!』


グラディス王女は誇らしげに、指輪を見つめて言いました。


< 231 / 245 >

この作品をシェア

pagetop