身代わり姫
「よくやった。
王女、それをそうやって掲げてな。レオノーラは王女の手に自分の手を添えろ」


リュアネスが杖を握って、呪文を唱え始めました。レオノーラはグラディス王女の体を支えるようにしながら、自分の右手を王女の腕に添わせました。


妖精の涙から風が巻きあがります。



「九十九夜の月の光を浴びた石よ、妖精の力よ、今その力を使いて悪魔の呪い解き放たん」


リュアネスが呪文の最後の言葉を唱えた瞬間、クリーム色の光が宝石から溢れました。

レオノーラとグラディス王女は、その光に包まれながら、抱き合うように寄り添いました。


ああ、何だか体の力が抜けていく……。


レオノーラは自分の体から、何かが吸い取られるように消えていく感覚がありました。




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