身代わり姫
その笑顔を見ただけで、領主は少し顔を赤らめました。


「いやいや、いいのです。さあ、行きましょう」


領主は噛みつかんばかりの顔をしている精霊をちらりと見て、仕方なくレオノーラの前に立ち、歩き出しました。


「レオノーラ、オレが守ってやるからな! 安心しろ」


レオノーラの顔の前でふわふわと飛んでいた精霊は、そう言うとまた水晶の中に吸い込まれるように消えていきました。


レオノーラはその水晶をそっと握りしめ、小さな小さな声でありがとうと呟きました。


「レオノーラ殿、どうなされた? もうすぐ謁見室につきますぞ」


領主が訝しげに振り返り、レオノーラは首を横に降って笑いました。


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