身代わり姫
ところが。

いつまで経っても国王様も王女様も現れません。

部屋の隅にある、大きな時計のかっちかっちという音だけが部屋に響きます。


どうしたのかしら?
何かあったのかしら?


レオノーラは、固まったように動かないパメラをそっと窺いました。パメラは目を閉じて、眠っているようにも見えます。

パメラ様はいいなあ。あんなお顔だから、居眠りしていても、きっと誰も気が付かないわ。

レオノーラは、パメラの向かい側に座っている領主を見ました。欠伸をかみ殺しているのか、目尻に涙が滲んでいて、何度も何度もひげをしごいています。

ああ、国王様はまだなのかしら。

レオノーラはする事もないので、きょろきょろと部屋を見渡しました。


「レオノーラ、はしたないよ」


やはり起きていたのか、パメラがぴしりと言いました。
レオノーラは首をすくめて、うつむきました。


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