身代わり姫
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グラディス王女は、うきうきとしながら謁見室に入りました。


あら? 薄気味悪い魔術使いのパメラまでいるじゃないの。しばらく姿を見せなかったのに、戻ってきたのね。


父王が慇懃な口調で、パメラの長旅を労るような事を言っていましたが、グラディス王女は早く妖精の涙が見たくて、野暮ったい田舎の領主に声をかけました。


「あなたがココアの領主ね? それで、私へのプレゼントはどこかしら」


「は、はいっ。こちらでございます!」


みっともないクッションの房のようなひげをたらした領主は、かしこまった様子で小さな銀製の小箱を差し出しました。


「そう、ありがとう」


かたり、と箱をあけると、そこにはグラディス王女が初めて見る輝きの宝石がありました。


まあまあ、何て美しいのかしら。


グラディス王女はうっとりと宝石を眺めました。


「グラディスや、わしにも見せておくれ」


父王が興味深げに箱を覗き込み、感嘆の声をあげました。


「ほう、これはまた真珠のような気もするが、また違う。こんな宝石が存在するとはのう」


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