身代わり姫
グラディス王女は、そっと小さな宝石をつまみ上げ、光にかざしてみました。
柔らかな光がこぼれます。


「ああ、素晴らしいわね。私、これを指輪にするわ。プラチナの台にのせましょう。すぐに細工師を呼ばなくては」


王女のそんなにこやかな様子を見て、国王は満足そうに頷きました。
美しいプレゼントを持ってきた、今まではあまり気にもとめていなかった領主に、お褒めの言葉をかけます。


「妖精の涙とは伝説の宝石だと思っておったが、なかなかに麗しい。して、そちはこの稀なる宝をどうしたのじゃ?」


「それはあたしから説明しましょう」


喜びで興奮しきっている領主が口を開くより先に、パメラが言いました。


「国王様は、妖精の涙のお伽話をご存知でありましょうな。妖精に愛でられた娘がもらえるという」


「知っていてよ。私も、子供の頃にばあやに聞かせてもらいましたもの」


銀の小箱を、大事そうに抱えたグラディス王女が、横から口をだしました。


「はい。その妖精に愛でられた娘が現れたのです。今グラディス王女がお持ちのその妖精の涙は、その娘から手に入れたものなのですよ」


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