身代わり姫
グラディス王女はふかふかのソファに腰掛け、部屋の隅に飾られた、明日のパーティー用のドレスを見ました。


ああ、いつもみたいに、素直に楽しみたいわ。

せっかくのドレスなのに。
せっかくの素晴らしい宝石を、みんなに見せつけられると思っていたのに。

珍しくて美しい宝石、妖精の涙を見たらきっとみんな釘付けよね。


でも。
グラディス王女はあの噂を思い出してまたイライラしました。

城下町から王宮まで、みんなが噂しているのは、魔術使いパメラの美しい弟子の事。

パメラのお使いで城下町や王宮にあの娘が現れる度に、みんなざわざわとざわめくのです。


そして口々に、なんて綺麗な娘だろう、なんて美しいのだろう、なんていい香りだろうと言うのでした。


何よ何よ、あんな娘なんて大した事なかったじゃない!
みんな綺麗な金髪だって言うけど、あんな赤みのある髪なんかより私の方がよっぽど美しいわ。大体口も聞けないような娘のどこがいいっていうの!


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