身代わり姫
グラディス王女は部屋に戻り、柔らかなドレスを引きちぎり、ネックレスを床に叩きつけました。
そして、今や憎しみの対象でしかなくなった、妖精の涙の指輪を庭の池に放り込みました。

こんな指輪なんていらないわ。
何が妖精の涙よ。
何が妖精譲りの美しさよ。

私が妖精に出会えばきっともっと美しくなって、あんな娘なんか目じゃないんだから。


あんな娘なんか!


グラディス王女は身の内を巡る激しい怒りのせいで、護身用の小さな銀のナイフを握りしめ、恐ろしい事を考えつきました。

……そうだわ。あんな娘、殺してしまえばいいのよ。

死んで、いなくなっちゃえばいいんだわ。私のパーティーを台無しにしたんですものね。とっても罪は重いわ。


グラディス王女は月明かりに光るナイフを握り、にんまり笑いました。


< 92 / 245 >

この作品をシェア

pagetop