やきもち王子
気付けばわたしは秀の手をとっていた。
例えお芝居でも、秀の前で他の人を
選ぶなんてできなかった。
それからわたし達は踊り続けた。
−ゴーンゴーンゴーンゴーン
そして十二時を知らせる時計がなった。
「帰らなければ…!」
秀は名残おしそうに、でも素早くわたしの
手を離して走りだした。
「ま、待って!!」
秀いかないで。
わたしは必死に追いかけた。
でも残っていたのは片側だけの靴だった。
切ない気持ちがおしよせる。
練習の時にはなかった。
シンデレラの後を追った王子様もこんな
気持ちだったのかな……?
「……あなたは誰?
もう一度会いたい…………」
わたしは台本通り、ぎゅっと靴を抱きしめた。