超短編集
犬
二人の女性が話をしている。身なりから判断するになかなかのセレブだ。
二人は犬の散歩中であった。
「ウチのワンちゃんてばメス犬を見かけるとすぐ興奮して嫌になるわ」
最初は何でもない世間話だったのがいつの間にやら愚痴になっていた。こうなるともう止まらない。
「キチンと躾たはずだったんだけど、どうしてこうなっちゃったのかしら?」
「アラ奥さん。うちのだってそうですよ?」
女性は連れて歩くトイプードルを愛おしげに見つめて言う。
「うちのは何度も言い聞かせたんですけど、やっぱり一向に治らないんです」
「そうなの……。本当にこれはゆゆしき問題だわ」
女性は立ち止まり溜め息をついて、自分の大型犬を慈愛を込めて撫でる。
もう一人の女性も自身の犬を撫でた。
「あなたのワンちゃんは小型だから、まだ可愛らしいじゃない。うちなんて大型犬だからシャレにならないわよ」
「あら」
女性は眉根を寄せて言った。
「うちだってシャレになりませんわ。
メスに節操がないのはワンちゃんじゃなくて夫ですもの」
二人は犬の散歩中であった。
「ウチのワンちゃんてばメス犬を見かけるとすぐ興奮して嫌になるわ」
最初は何でもない世間話だったのがいつの間にやら愚痴になっていた。こうなるともう止まらない。
「キチンと躾たはずだったんだけど、どうしてこうなっちゃったのかしら?」
「アラ奥さん。うちのだってそうですよ?」
女性は連れて歩くトイプードルを愛おしげに見つめて言う。
「うちのは何度も言い聞かせたんですけど、やっぱり一向に治らないんです」
「そうなの……。本当にこれはゆゆしき問題だわ」
女性は立ち止まり溜め息をついて、自分の大型犬を慈愛を込めて撫でる。
もう一人の女性も自身の犬を撫でた。
「あなたのワンちゃんは小型だから、まだ可愛らしいじゃない。うちなんて大型犬だからシャレにならないわよ」
「あら」
女性は眉根を寄せて言った。
「うちだってシャレになりませんわ。
メスに節操がないのはワンちゃんじゃなくて夫ですもの」