振り向け ~強引なkiss~
「望(ノゾム)ぅ~!」
俺のイライラを逆撫でするかのように、甘ったるい声が俺の名前を呼んだ。
振り返ると、目の前にはパンダみたいな化粧をした女。
「今日1人~?
ならアタシと一緒に帰ろ~?」
そう言いながら、俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
離せ、気持ちわりー。
その時、少し離れた場所にいた美保と目が合った。
眉間にシワを寄せて、複雑な表情を浮かべた美保。
そして、一瞬だけパンダ女に視線をずらすと、すぐに目を反らした。
でも、俺は見逃さなかった。
美保の瞳が、弱々しく淋しげに揺れたのを。