君と共に
一仁の指の先を目で追う。
そこには、扉に寄掛り、こちらに笑顔を向ける男が一人。
はぁ……
心の中で大きな溜息を吐く。
「頑張ってね~」
あたしの気持ちを知ってか知らずか、紗結はやる気のない声を投げ掛けてくる。
紗結は、いつもの事だと分かっているから。
いや、クラスメート全員が、いつもの事だと分かっているだろう。
だから、あたしが男子から呼び出されるなんて、普通なら好奇の目で見るであろう事も、チラッと見ただけで、また自分たちの世界に入ってゆく。
唯一救いなのは、誰も嫌な目線を向けてはこないこと。
嫉妬だとか嫌悪だとかの。
あたしは、時たまこうゆう状況になる。
まあ、男子に呼び出されるって事だけど。
だからみんな慣れてるんだ。
それだけの事…。