君と共に


一仁の指の先を目で追う。

そこには、扉に寄掛り、こちらに笑顔を向ける男が一人。

はぁ……

心の中で大きな溜息を吐く。


「頑張ってね~」


あたしの気持ちを知ってか知らずか、紗結はやる気のない声を投げ掛けてくる。

紗結は、いつもの事だと分かっているから。

いや、クラスメート全員が、いつもの事だと分かっているだろう。
だから、あたしが男子から呼び出されるなんて、普通なら好奇の目で見るであろう事も、チラッと見ただけで、また自分たちの世界に入ってゆく。

唯一救いなのは、誰も嫌な目線を向けてはこないこと。

嫉妬だとか嫌悪だとかの。

あたしは、時たまこうゆう状況になる。

まあ、男子に呼び出されるって事だけど。

だからみんな慣れてるんだ。

それだけの事…。


< 4 / 52 >

この作品をシェア

pagetop