君と共に

やる気のない足取りで、この寒い日に戸を開け放して、寄掛っている男の元へと歩いて行く。

後ろで、一仁があたしの席に座るのが気配で分かる。


「はじめまして」


あたしはそう言って、男を見た。

少し見上げないと顔が見えない。

あたしの身長が160cmくらいだから、その人は180cmくらいあるのかもしれない。

茶色とゆうよりは、少し金に近い髪。

悪戯っぽい目元が印象的だ。

……多分初めて見る人。

なのに、あたしに嫌な記憶を思い出させて、思わず目を逸らす。


「はじめまして。
俺、安藤。安藤 武(アンドウ タケル)ってんだ。
……俺と付き合って」


安藤はにっこり笑顔を向ける。

いや、向けた気がした。

だって、あたしは目を逸らしてたから表情なんてわかんないし。


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