君が眠れば
風を受けてはためく白いマント。
漆黒の、どこまでも深い瞳が、周囲を捉えた。
力強く一閃されるのは、身の丈ほどの大剣。
その人知を超えた迫力に、北部エキドナ軍は怯んだ。
そこを駆け抜けるのは小柄な影。
細身のロングソードを眼にも留まらぬ俊敏さで揮う。
タン、と地を蹴る音がして、その姿が空に舞った。
女だ。
宙返りをするように躍り出た彼女は、再びガラの揮った剣を足場にし、空中から襲い掛かる。
あっという間だった。
軽やかに戦場を駆ける女と、勇ましく大剣を振り回す男にすっかり戦意を喪失した北部エキドナ軍は、早々に退却を決した。