緋色の奇跡
「みず……き?」


どれ位ぶりに聴いた声だろう

受話器を通さずに、彼女の声を聴いたのは……

声のした方を振り返ると、そこにはお母さんが立っていた


「おかあ……さん」


呟くように言った私は、気付いた瞬間には彼女に抱きしめられていた


「無事だったのね。良かった………」


「良かった、良かった」とうわごとのように呟く彼女を、私も抱きしめ返した


「ごめんなさい、心配かけて。ただいま、お母さん」

「無事だったなら良いの。良かっ……瑞杞その髪……………」


改めて私を見た彼女が、私の髪型に変化がある事に気がつく

一気に短くなった私の髪

それを見て彼女はきっとある人物を思い出してしまっているだろう

あの日から私は1度も髪を切ろうとはしなかった


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