緋色の奇跡
しかしそれは1つの出来事によって遮られた

ズドンという大きな音

自分が

地面が

すべてが揺れていると分かったのは、自分が倒れてからだった


「危ねー!!!」


凌の声が聞こえた気がした

悲鳴でいっぱいになる地下街の中、彼の声は不思議と私の耳に透って聞こえる

瞬間私を包み込む優しい腕

気がつけば、私は凌の腕の中にいた

たった2,3分の出来事

しかし、その揺れは一生続くのかと思うほど長く感じた

その揺れが少しずつおさまると、耳に入ってくる周囲の声は、苦痛の声と悲鳴だった


「いってぇー」


ゆっくり目を開いた私の耳に入ってくる彼の声に、私は少し安心する



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