緋色の奇跡
バンと勢いよく押した会議室の扉

いくつかのシートの上に、何人かの人がいる

そうして、その周りにもそれぞれ何人もの人がいる

その中に見覚えのある2人の姿を発見する

凌のお母さんとお父さんだ

その部屋にいた人は、皆私が入ってきた事に驚いてこちらを見たけれど、すぐに視線を元に戻していた

だから、こちらを見続けているその2人に、私が気がつくのに時間はかからなかった


「柊……瑞杞さんね」


凌のお母さんが私の方に近づくと、彼女はニコッと弱々しく笑みを浮かべた

そうして、ゆっくりうなずく私の手を引くと、先ほどまでいた場所へと連れて行く

シートの上

横たわっているのは、凌の姿

閉じられたままの瞳

血の気のない肌の色が、どういう事か物語っている


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