緋色の奇跡
それはメールボックス

さすがに遺族の方から直々に渡されたとはいえ、彼のプライバシーを見るなんて、気が引ける

それでも、知りたいと思った

今はもう何も聴けない彼の言葉が、もしかしたらココにあるのかもしれないのならば、知りたいと思った

親指で、ボタンをクリックする

私自身のケータイに何もメッセージが来ていないとなると、あるのは下書きボックス

ゆっくり画面を下にスクロールしていき、目当ての項目で指を止める

顔を上げて、窓の外を見ながら、私は静かに呟いた


「凌、見るよ?良いよね……?」


そう言って深呼吸をしてから、私はボタンを押した

下書きボックスにあったメールは1件

タイトルは「瑞杞へ」

これを彼女たちは見つけたのだろう

だからこそ、私にこのケータイを渡してくれたのだ

大切な息子の形見の1つを……

もう1度深呼吸をして、私はそのメールを開いた


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